顔のたるみの心強い参入
暗号技術である「公開鍵暗号方式」は,皆さんが通常用いるパスワードや暗証番号のように基本的には本人だけが知っている秘密情報を利用するものであるが,多少ひねった仕組みになっており,@その秘密情報の桁数が100桁以上もあって解読が困難である点(一方,キャッシュカード等の暗証番号では4桁が普通),A送信者が秘密情報を用いて送付する文章を暗号化し,受信者は対応する別の秘密情報を用いて暗号化された文章を復元できた場合に本人確認ができる仕組みとなっている点(一方,暗証番号では送信者と受信者の間で秘密情報自体がやりとりされる),B送信者と受信者の持つ秘密情報が違うので,誰が情報を送信したかが特定できる点(一・方,暗証番号では送信者も受信者も共有しているため,情報を送信した者が特定できない)に違いがみられる。
やや技術的になるが,公開鍵暗号方式についてもう少し詳しく説明しよう。
ここでは,コンピュータを利用して通常の文章(平文データ)を暗号文に変換(「暗号化」)する暗号(「暗号鍵」)とその暗号文を元の文章(平文データ)に復元(「複号化」)する暗号(「複号鍵」)を用いる。
複号鍵は所有者が他人に知られないように管理し(「秘密鍵」),暗号鍵は一般に公開する(「公開鍵」)。
秘密鍵と暗号鍵は対になっており,一方で暗号化した情報は他方で複号化することができる。
すると,たとえば,消費者Aが販売店Bとの間で文書をやりとりする場合,Bが秘密鍵と公開鍵を用意したとしよう。
AはまずBの公開鍵(暗号鍵)を認証機関から入手し,この鍵を使って普通の文章を暗号化して送信する。
一方,Bは自分の秘密鍵(複号鍵)を使って暗号化された文章を普通の文章(平文データ)に戻して見ることができる。
さて,もし平文データの暗号文を作ったのがA本人ではなく,別の誰かが公開鍵を利用してなりすまして作ったものならばきちんとチェックできるであろうか。
このことを確認するために上記の平文データの暗号化を秘密鍵で行うのが「電子署名」(より正確にはデジタル署名)である。
電子署名は上の平文データの送信とは反対に,送信者Aが平文データ(より正確には平文データをハシシュ関数で圧縮したメッセージ・ダイジェスト。
そこで以下,署名データとする)をAの秘密鍵で暗号化して署名データを送信し,受信者がAの公開鍵で複号化することで署名の正当性を確認するものである。
具体的には,@送信者は署名データを自分の秘密鍵で暗号化することで電子署名を作成し,A受信者は送信者の公開鍵を使って電子署名を複号化することで,送信されてきた平文データから算出した署名データとの一致を確認する。
これが一致すれば,この暗号文は送信者しか知らない秘密鍵によって作られたものだとわかり,暗号文を作ったのが送信者本人であることが確認できる。
こうした電子署名の仕組みをうまく機能させるためには,受信者が送信者の公開鍵を容易に確認できる仕組みが必要になる。そこで,送信者は予め信頼できる第三者機関(認証機関)に公開鍵を届け出て,その認証機関から,その公開鍵が送信者のものに間違いないことを証明する公開鍵証明書(紙ではなく電子的なデータ)を出してもらい,相手方に送信する際に添付する。
また,それを受け取った受信者は認証機関に照会することで,送信者が本人であることなどを確認できる。
また,認証機関が公開鍵から本人を特定する本人確認業務のことを認証業務と呼んでいる。
さて,電子署名や認証機関に関しては,20CO年に「電子署名及び認証業務に関する法律」(以下,電子署名法)と「商業登記法等の一部を改正する法律」(以下,電子認証.公証法)が成立し,法的基盤が整えられた。
電子署名法は,電子署名にも従来の取引における手書きの署名や印鑑と同等の法的効力を確保することを主眼に制定され,電子的データに記録された情報に本人による電子署名がなされている場合には,その電子署名が一定の強度を備えていればそのデータが真正に成立したものと推定する旨の規定(3条)を置いている。
一方,電子認証・公証法では,信頼できる第三者機関としての認証機関の役割を商業登記所の登記官や公証人(指定公証人)が行うことを規定している(ただし,民間事業者を排除するものではなく,それとは異なるサービスを行うことが想定されている)。
たとえば,商業登記所ですでに機能している商業登記制度に基礎を置く電子認証制度は,登記や印鑑に関する情報を基礎に会社代表者の電子署名に関する電子認証を行うほか,会社の存在や代表権の存在等を証明するものである。
一方,電子公証では,法務大臣が公証人の中から一定の設備等を備え適当と認めた公証人を指定公証人として指定し,指定公証人を通じて現在公証人が行っている私署証書の認証や確定日付の付与(後述するようにこの電子確定日付付与により譲渡性預金(CD)の電子化進展に寄与するといわれている)といった業務を電子化する。
また,認証を受けたり日付情報を付された情報を保存し,その内容を証明することができる制度を新たに設けた。
さて,インターネット・ショッピングに戻ると,電子署名によって取引が真正に成立したことが確認された後は,決済の段階に至る。
一般に決済とは「債権・債務関係を終結させること」を意味し,settlement(最終決済),clearing(清算),payment(支払)に分かれる(第5章参照)が,ここで扱う決済は支払(payment)決済である。
現段階では,インターネット・ショッピングモールの決済においても,従来の取引の決済と同様に銀行・郵便振込や代金引換郵便など電子化(オンライン化)されていない決済手段も多く用いられているが,電子決済も次第に使われるようになってきた。
電子決済の中ではクレジットカードが最も多く使われているが,今後は電子マネーを用いた決済も進むと期待されている。
そこで各々についてみていこう。
まず,クレジットカードを用いた電子決済であるが,クレジットカード番号等の情報を直接送信して支払う方法と予め登録しておいて支払う方法がある。
直接送信して支払う場合,カード番号等の情報はそのまま送信されるため,インターネット・ショッピングの販売店がカード情報を悪用したりその他の大切な情報が漏れる恐れがある。
そのため,消費者,販売店,カード会社の各当事者が各々取引に必要な情報しか得られず,カード番号等の悪用が防ぎ得るような技術的な仕組みが必要になる。
そこで,インターネット上でのクレジット.カード決済を安全に実現する通信プロトコルとしてSET(SecureElectronicTransactions)が幅広く用いられている。
また,消費者のクレジットカード番号をショッピングモールの運営主体に予め登録し,消費者は運営主体にIDやパスワードを送信して決済を行うことによっても,販売店にカード番号等が伝達されるリスクが遮断できる。
ただし,SETを利用したりショッピングモール運営主体が介在するからリスク対策が万全だということにはならない。
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